塀の中の不思議な場所
「凄い楽しい場所を見つけたから、
お前も来いよ!!」
友達がそう言うので、僕はついて行った。小学3年生位の頃だ。
いつもの住宅街を抜けていくと塀がありそこには一箇所、人が入れるくらいの穴が空いていた。こんな所に塀などあっただろうか・・・。
不思議に思いながらも、友達はその穴を潜り抜けていったので、、僕もその穴を抜けて中に入っていった。
中に入ると、そこには広場が広がっていた。
ボールを蹴って遊ぶ子供達。縄跳びや、
鬼ごっこをして遊ぶ子供達。
子供の定番の遊び方だ。大人は一人もいなかった。
とても不思議だったのが、その子供達が何の迷いもなく、心から楽しく遊んでいるのが自分にも伝わってくるような、そんな場所だった。
僕たちは、その広場で走り回り、心置き無く遊び回った。今でも覚えているくらいなのでよほど楽しかったのだろう。
数日後、またその場所で遊ぼうと思い
一人で行こうとすると、途中の道までは
覚えているのだけど、何故か塀のところ
までたどり着くことができなかった。
そもそも、誰と来たのかさえ、思い出すことが出来ない。
「夢だったのだろうか・・・。」
それにしては、やけにリアル過ぎるし、
お昼に母が作ってくれたご飯を食べ、
友達が遊びに呼び鈴を鳴らすところまでは鮮明に覚えているのに・・・。
その後、何度かチャレンジするも、結局その場所にたどり着くことは出来なかった。
みんな楽しそうにしていたあの場所はいったいなんだったのだろうか。
考えた結果、僕はその場所に『楽園』という名前をつけ、探すのをやめた。
そういう場所があっても、たまにはいい。そう思った。