鉛筆と紙があればなんとかなる。
この1000円をあなたに渡すので、増やしてきて下さいと頼んだらあなたはどうしますか?
というテーマを、ある本で読んだことがある。
ギャンブル的なことをする人もいれば、
そもそも1000円を全く使わずに増やす方法を考えたりする人もいる。
靴を磨いて増やす人、自転車の空気を代わりに入れてあげて増やす人。
このお題の中ではギャンブル的なものはリスクも高く、確実性がないので評価的にはあまり高くなかったような記憶がある。
やはり評価が高いのは、全く使わずに増やす方法を考える人、又は極力使わずに増やす方法を考える人なんですよね。
僕はというと、基本的に鉛筆と紙があればなんとかなるだろうと思っている。
美術の予備校時代、僕は人物の顔を描くのがとても苦手だった。
自分の顔を鏡で見ながら描くのが嫌いだった僕は、練習量の少なさから一向に上達しなかった。
ある時、先輩に相談したら
「だったら、外で描けばいい。だって人は沢山いるじゃないか。」
という、唐突な言葉が帰ってきたので、ひょんな事から僕は先輩と一緒に路上で似顔絵を描く事になった。
勿論、スケッチの練習なので、料金は無料。あまり待たせてはいけないので、時間は長くても5分程度(ちょうどその時期は真冬だった)。描いたものは、プレゼントととして相手に渡すという仕組みだった。
はじめは、全く人がこなかった。
でも、1人が興味を持って来てくれると後はそこから、沢山の人達が興味を持ってくれて、次第に列を作り始めるようになった。
スケッチはだいぶ上達した。何せ、相手に話しかけながら描いたり、次に待っていたりする人もいるので、スピーディーに仕上げなければならない。
しかも、無料とはいえ駄作は人にあげたくない。
なので、一生懸命に描いた。
そうしていると、無料にしていても、
「本当に嬉しい。良い記念になった。」
と、お礼にお菓子を持って来てくれる人、暖かい飲み物を買ってきてくれる人に沢山巡り会うことが出来た。
考えてみると、自分の絵が、他の何かに変わるのはこの時の経験がはじめてだったと思う。人の暖かさも感じることができた。
なので、僕は紙と鉛筆があればなんとかなると思っているし、最高のコミュニーケーションツールだと今でも感じている。
ただ少しだけ補足して置くと、路上には陣地があったりルールがあったりするのですね・・・。
怖い経験もあったり・・・なかったり・・・というところで、人の暖かさもあれば冷たさもあるというところでしょうか・・・。